従姉妹がお星さまになった

従姉妹がお星さまになった。仏様でもいいのだけど、カービィが好きだった彼女にはお星さまのほうが似合うだろう。

 

彼女は私の6歳下で、30半ばだった。
絵心があり、幼い頃からバンドサウンドが好きだった。
当時小学生だった彼女がライブに行くには保護者が必要で、どや顔で連れて行った覚えがある。
しかし、いくら本人が行きたがったとはいえ、初ライブがPIERROTだったのは、かなりの無茶振りだった気がする。

そうして音楽の世界に足を踏み入れた彼女だが、メジャーバンドにハマった私とは異なり、インディーズの追っかけになっていった。
高校生になった彼女に連れられて一度だけインディーズライブに行ったが、距離が近くて驚いた。
それは物理的な距離だけでなく、打ち上げに参加できたり、恋人になれたり、そういった意味でも「近い」ものだった。

インターネットがそこまで普及していなかった時代に、それでも私は知っていた、のに。
所謂アンダーグラウンドな世界がある事を。
彼女は闇へ堕ちていった。

ただの栄養ドリンクでもそうなのだけど、飲んだ瞬間は力がみなぎるが、効果が切れた瞬間からどっと疲れが襲う。
元気の前借りとでも言おうか。
合法なものですら反動が凄いのに、違法なものとなれば、当然体にも負担が掛かる。

全てがそうとは言わないが、インディーズバンドや地下メンズアイドルらは、やたら葉っぱや違法なおくすりの使用が多い。いまだに。
一時的に逃避したところで、現実への絶望は、より深くなるだけなのに。
何とか社会復帰してバイトしたりはしていたが、最期はオーバードーズでお星さまになった。

私にとってライブは「明日からも頑張ろう」という生きる活力であり、頑張ったご褒美でもある。
彼女にとってはどんな意味があったのだろう。
前向きなものではなかったのだろうか。
生きる支えにはならなかったのだろうか。
長い長いコロナ禍の現代で、やっと声出し可能公演も増えてきたのに。

 

大人になってからはあまり交流がなかったし、実感が湧かないまま書き連ねているが、同胞がいなくなった事に今は「そっか…」という言葉しか出ない。
引き留めれたんじゃないかとか違う道を提示できたんじゃないかとか、ただの従姉妹でしかない私が思うのもおこがましいかもしれないけど。
そもそも、絶望している人に声が届くとも思ってない。
ただ、音楽が救いではなかった事を少し悲しく思った、そんな夜。